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あとがき
吉原 俊雄
pp.266
発行日 2008年3月20日
Published Date 2008/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101226
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救急患者の“たらい回し”事件(この言葉はかならずしも適切ではない)に関するメディアの最近の論調は,以前であれば医師批判,病院批判に終始するところが医師不足,勤務医の過重労働,行政の問題とやや医療側に同情する面もみられる。確かに産婦人科,小児科の深刻さは周知のことだが,あまり話題にのらない耳鼻咽喉科を含むいくつかの科についても同様の状況である。
新初期臨床研修制度の良い点として専門科を決める前に多くの科を体験すること,全身的な知識を深めることなど一見理想的な側面がある一方,かつては卒業時に直感的に自分の行きたい科,合っている科を選択していた(将来3Kの科,多忙な科であろうと意外とフィットさせて皆がんばった)のが,2年のゆっくりとした研修の間に余暇の多い科,9時~5時の科,収入の多い科などを比較検討して値踏みするという,理想とは逆の効果を生み出しているのも事実である。大学医局の集中入局を分散させる効果は達成されたが,関連施設には常勤医のいない科が多く存在している。学生6年,研修2年,その後専門科に入るというシステムを急にスタートさせたことで,専門医が仕上がるまでの期間の遅れがさらに人手不足に拍車をかけている。開業医の再診料を引き下げ,病院のそれを上げるとか,勤務医の開業に歯止めをかけるため,開業する前に僻地勤務を義務付けるなど,いかにも付け焼刃的な対応策がメディアをかけめぐっている。
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