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TVでは再度の事業仕分けが放映されていますが,何か空疎な印象は否めずパフォーマンスにも陰りがみえます。さらに問題発言で政治家更迭のニュース,TPPに関する通訳を通した日米の認識の相違,大阪府知事,市長選の結果など,現政権の不安定さが浮き彫りです。吉と出るか凶と出るかわかりませんが2012年は大きな変化を予感させます。TPPの今後の成り行きによっては,日本の医療の全体像,さらにわれわれ耳鼻咽喉科医の将来像についても覚悟するときがくるかもしれません。特に新しい20代の耳鼻咽喉科医の20~30年後が希望に満ちた,確固たるものでなければなりませんが,われわれ中高年医師の責任は重くなってきました。統計的に耳鼻咽喉科医総数はあまり大きな変化はないものの,感覚的には大学病院への男性入局者の減少,実働する勤務医と診療所医師数のバランスの悪さを実感している全国の先生も多いと思います。もちろん例外的にマンパワーの潤沢な施設もありますが,医師派遣困難な医局から余裕のある医局に派遣元が変わることもなく,パート医のみになった病院も多くみられます。国民にも産科,小児科のような切迫感が認知されていないのが残念です。
さて,本号では特集として「日常診療で遭遇するトラブルへの対応」が組まれています。診療所,勤務医いずれにとりましても遭遇する可能性のあるトラブル,表現を変えればインシデント・アクシデントについての解説とその対応をわかり易く,かつ実践的にまとめていただきました。昨今の医師―患者間の関係からは訴訟となることも有り得る事例です。さまざまなトラブルの可能性を念頭に置きつつ診療にあたる必要性を考えると,起こった後の処置など若手医師からベテラン医師まで有益な内容となっています。原著論文は7編掲載させていただきました。そのうち5編はすべて頭頸部腫瘍に関するものです。いずれも興味ある報告で,口演であれば,頭頸部外科医にとってさまざまなdiscussionが予想される内容です。他の2編も臨床に役立つ力作です。マンパワーの少ない施設での若手医師は日常診療に追われ,経験した興味ある症例を論文までにまとめるのは大変かもしれませんが,奮って本誌に投稿されることを編集委員一同期待しています。
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