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I.はじめに
鼻アレルギーは現代病といわれ,症例数が増えたことで社会問題にまで発展しつつある。しかし治療に関しては,発症のメカニズムがかなり解明されてきているにもかかわらず十分に満足のいく治療法がない。最近の治療指針である鼻アレルギー診療ガイドライン(2002年版)によれば,アレルギー性鼻炎の手術治療は重症度分類における重症と診断した症例に適応があり,抗アレルギー剤内服治療が優先としている印象がある。この手術療法は目的別に3種類に分類される。第1は鼻粘膜縮小と変調を目的とした手術で,電気凝固,凍結手術,レーザー手術法,80w/v%トリクロール酢酸塗布が含まれている。第2は鼻腔通気度の改善を目的とした鼻腔整復術で,粘膜下下甲介骨切除術,下甲介粘膜切除術,鼻中隔矯正術,高橋式鼻内整形術,下甲介粘膜広範切除術,鼻茸切除術で,第3は鼻漏の改善を目的としたvidian神経切断術が示されている。いずれも優れた治療法であるにもかかわらず,第1の方法を除いて入院対処が必要となることが多い。また第1の方法において,たとえday surgeryの方法であっても高額な設備を必要とする方法を含んでいる。社会的,経済的負担が多いことが,重症例に適応とした原因のように思う。もしも負担の条件がなく,臨床成績が比較的良好であるなら,手術治療はアレルギー性鼻炎の治療手段として第1選択と考える。
われわれは,1986年からトリクロール酢酸の80w/v%濃度溶液(以下,TCA)を十分な表面麻酔後に,両側下甲介に綿棒で塗布する下甲介化学剤手術(以下,TCA手術)をアレルギー性鼻炎の第1治療選択法として行ってきた1,2)。内服治療が,内科は当然としてあらゆる科で安易に行われている現状に対して,TCA手術は耳鼻咽喉科独自のday surgeryとしての方法であり,安全で副作用がなく3),保険適用があり,臨床成績は良好である。
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