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温度眼振今昔―眼振の三次元分析と重力―
Caloric Nystagmus:Past and Present―ThreeDimensional Analysis with Special Consideration of Gravity
新井 寧子
1
Yasuko Arai
1
1東京女子医科大学附属第二病院耳鼻咽喉科
pp.9-22
発行日 2004年1月20日
Published Date 2004/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100521
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I.はじめに
温度眼振とは,迷路に加えられた温度刺激によって惹起される眼振のことである。迷路を一側のみ刺激して,前庭眼反射をみることができる唯一の方法であることから,めまい患者の臨床に欠くことのできない検査であり,1906年のBarany1)の報告以来“温度刺激検査caloric test”として広く行われている。“温度眼振”をキーワードにして文献検索をかけるとたちどころに1,000以上の文献がみつかり,もう研究され尽くした感がある。
一方,耳科医にとって温度眼振とは極めて日常的な現象である。耳垢や耳漏を吸引したり洗い流すとき,ときに患者は気持ち悪いとかめまいがするとか言い大騒ぎする。眼振が出ていることで,心筋梗塞や脳梗塞,vago-vagal reflexによる血圧低下と容易に区別できる。点耳薬を処方する際は,“手で握るなどして人肌に温めて”から点耳するよう指示しないと,温度刺激によるめまいのために患者は一度の点耳でやめてしまう。鼓膜麻酔のためのイオントフォレーゼには37℃に温めた薬液を使わなければならない。
本稿では,この古くて新しい温度眼振の今日的おもしろさを紹介したい。
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