特集 副鼻腔炎
1.副鼻腔炎のガイドライン
竹中 洋
1
1大阪医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.795-798
発行日 2005年10月20日
Published Date 2005/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100199
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Ⅰ.はじめに
40年ほど前に,学校健診を中心に副鼻腔炎は国民病といわれた時期があった。その後,成人におけるスギ花粉症の猛威が報告され,ここ4半世紀については増加するアレルギー性鼻炎の実態が疫学でも明らかにされ,鼻副鼻腔疾患の世代交代が進んだかに見える。しかし,内視鏡下鼻内手術の導入や高齢者のQOL意識の高まりで,手術件数は増加傾向にある。保存的治療ではマクロライド療法が提唱され20年が経過するが,薬剤抵抗性の副鼻腔炎の存在が明らかになってきた。特に好酸球浸潤と嗅覚障害を主症状とするいわゆる好酸球性副鼻腔炎は,診断と治療に新たな問題を提起している。
一方,外来診療と手術を主とする治療法の選択についてのゴールドスタンダードはなく,保存的治療で軽症化をはかることができない症例やQOLが改善しない場合に,手術が選択されることが多いようである。現状では病気や病態から患者本位の治療が選ばれているか,あるいは治療法ごとの評価が試行されているかは定かではない。
一般にガイドラインは,種々の観点から診断と治療の妥当性ならびに蓋然性を論じるものである。したがって,観点が明確にされなければ,ガイドラインの意義も大きく異なるものとなる。しかし,引用される文献や治療成績のレベルがガイドラインごとに異なることはない。現在,日本鼻科学会で副鼻腔炎のガイドラインを作成中で,筆者も委員の1人である。この点を考慮しながら,副鼻腔炎のガイドラインについての問題点とその対応をまとめたいと考える。
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