特集 頸部リンパ節腫脹
4.結核性リンパ節炎
岩井 大
1
1関西医科大学附属洛西ニュータウン病院耳鼻咽喉科
pp.551-555
発行日 2005年7月20日
Published Date 2005/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100162
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Ⅰ.はじめに
結核菌は長さ1~4μm,幅0.3~0.5μmの桿菌で,色素にいったん染まると酸で処理しても脱色しにくいところから抗酸菌と呼ばれている。感染経路として,耳鼻咽喉科領域では結核菌で汚染された点耳液,および点耳スポイドで耳から耳へ直接感染した例があるが1),一般的には排菌している患者を介した飛沫・空気感染である2)。
日本人の結核罹患率は戦後徐々に減少したが,院内感染や集団感染の頻発により1996年から上昇に転じ,1999年に厚生省が「結核緊急事態宣言」を出すに至った。その後,罹患率は漸減したものの,人口10万人対26(2002年)という率は,先進国のなかでもいまだ飛び抜けて高い2)。日本人の15~20%が結核既感染であり,感染者の約30%が発病するが,一生涯のうちの発病時期は不定とされる2)。結核を疑うべき結核ハイリスク者は表1のとおりである。問診の時点で既往歴のある患者は当然本疾患を疑うとして,2週間以上の咳,痰,発熱が続く患者に注意を払うべきである。さらに,われわれ医療従事者が結核ハイリスク者であることを忘れてはならない。
結核のうち結核性リンパ節炎は肺外結核の約30%とされ,その70%が頸部に出現するとされる1,3)。また,頸部リンパ節炎の5%が結核性であり4),結核菌が咽喉頭からのリンパの流れに入って,頸部リンパ節に至ったものとされる。本稿では,頸部結核性リンパ節炎について述べる。
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