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Ⅰ.はじめに
中耳奇形は遺伝的要因,胎生初期の障害で起こり得るが,大多数は原因不明のものであり,耳小骨,顔面神経,鼓室腔,卵円窓,正円窓などの中耳構造の形態および機能異常を起こす。中耳奇形は先天性外耳道閉鎖症に合併してみられるが,単独で存在する例も多い。中耳奇形の中で聴力改善手術の適応となるものは,主に耳小骨奇形である。耳小骨奇形は,ツチ骨・キヌタ骨固着(以下,固着型と略す),キヌタ・アブミ関節の離断(以下,離断型と略す),アブミ骨固着症,アブミ骨の形成不全を伴う卵円窓閉鎖症(以下,卵円窓閉鎖症と略す)に大きく分類される。また,奇形が1箇所にとどまるmonofocalと2箇所以上のmultifocalに分類することもある。Multifocalではmonofocalに比較して聴力予後は悪い。
外耳道閉鎖や狭窄を伴わない中耳奇形の診断では病歴が最も重要で,難聴が生後から存在するか否かを聴取する。難聴は伝音性で非進行性であるが,遺伝性の一部(骨形成不全症や伴性遺伝のstapes gusher syndrome)に伴うものでは進行性,晩発性,混合性である。既往歴で多発奇形の有無,家族歴で遺伝性の有無について十分聴取する。耳鏡所見では,外耳道閉鎖症や狭窄を伴わない場合でも,外耳道のわずかな形態異常や鼓膜の平坦化,紡錘状のツチ骨柄を認めることがある。標準純音聴力検査では,離断型ではmass curve,固着型では水平型やstiffness curveの伝音難聴を生じることが多いと報告されている1)。ティンパノメトリーやアブミ骨筋反射の結果は標準純音聴力検査より特異性をもつが,必ずしも理論上の耳小骨の病態,障害部位と一致しないことも多く,補助診断にとどまる。最近では診断に3D-CT(図1)の有用性が報告されている2)。確定診断は試験的鼓室開放術によるが,CO2レーザーにて鼓膜に小穿孔作製後に極細硬性中耳鏡で鼓室内部の耳小骨を低侵襲下に観察したとの報告がある3)。鑑別疾患としては,先天性真珠腫や滲出性中耳炎が挙げられる。先天性真珠腫は中耳奇形と合併することがある。
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