書評
標準感染症学 第2版
山口 惠三
1
1東邦大学教授・微生物学
pp.44
発行日 2005年1月20日
Published Date 2005/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100061
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21世紀に入り,地球環境の変化はさらに加速されてきているように思える。経済先進諸国のみならず,中国,ASEANなどにおける近年の急速な国土開発や経済発展は,大気や海洋汚染を生み出し,地球温暖化の1つの大きな要因ともなっている。一方,世界人口の対数的増加傾向は依然としてとどまるところを知らず,必然的に弱小国においては貧困と飢饉の問題に直面し,衛生状態の悪化を招いている。また,交通網の充実や東西冷戦構造の崩壊は,世界のグローバル化を生み,モノやヒトの大規模な流通や交流が活発となっている。
このような社会的背景の変化が感染症の世界にも大きな影響を与えつつある。SARS,AIDS,エボラ出血熱のように忽然として出現した新しいウイルス性感染症,忘れ去られた感染症の再燃,そして感染性蛋白“プリオン”による感染症―狂牛病(BSE:牛海綿状脳症)など,20世紀後半からみられるようになったいわゆる新興再興感染症の出現は,まさに社会的要因の投影であるといっても過言ではない。21世紀に入ると,これまで存在した薬剤耐性菌はさらに多剤高度耐性を獲得し,世界中に蔓延している。そして,これらの病原体に起因した院内感染症は抗菌薬療法に抵抗性を示し,臨床上大きな問題となり,抗菌薬の適正使用が叫ばれている。
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