今月の主題 感染症における病原因子
巻頭言
感染症における病原因子
山口 惠三
1
Keizo YAMAGUCHI
1
1東邦大学医学部微生物学教室
pp.613-615
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903331
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はじめに
感染症の成立には,"微生物の病原性"と"宿主の感染防御能"とが深くかかわっており(host-parasite relationship),両者の均衡が崩れ,前者の力が後者を上回った状態で初めて感染症へと進展する.そして近年では,これらの両者の関係に"環境因子(医療行為)"が大きな影響を及ぼしている.
感染症の歴史を振り返ってみると,20世紀前半までは病原性の強い微生物による感染症がほとんどで,その病原因子についての研究が盛んに行われてきた.しかし,20世紀後半に入り,環境衛生の改善,優れた抗菌薬やワクチンの開発などによって伝染性感染症の多くは激減した.そして,今日では医療の進歩によってもたらされたコンプロマイズドホストの増加によって,病原性がきわめて弱い,あるいはほとんどないと考えられていた微生物による感染症,いわゆる"日和見感染症"がクローズアップされるようになった.しかし,このような状況の中にあっても微生物が有する独自の病原性が依然として重要な役割を果たしていることに間違いはない.
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