- 有料閲覧
- 文献概要
下咽頭毛細血管腫は稀な疾患である1)。今回われわれは,吐出した腫瘍の一部より確定診断を得て治療を行った1症例を経験したので報告する。
症例:54歳女性。
主訴:咽頭違和感。
既往歴:特記すべきことなし。
家族歴:特記すべきことなし。
現病歴:2002年12月下旬より咽頭違和感が出現した。2003年1月4日,咳嗽とともに咽頭より少量の出血と直径30mm大の白色の腫瘤片を吐出した。1月5日に近医耳鼻咽喉科を受診したところ,下咽頭腫瘍を指摘され,1月6日,精査・加療の目的で当科に紹介され受診した。
初診時所見:喉頭ファイバースコピーにて咽頭後壁に表面平滑,白色で喉頭腔に嵌入する腫瘤が認められ,先に吐出した腫瘤と同様の性状なため,腫瘤の一部が崩壊したものと考えられた(図1)。頸部リンパ節は触知しなかった。
画像検査:造影CTで咽頭後壁に造影効果を有する腫瘤が認められた(図2)。
MRIではT1強調画像で周囲軟部組織と等信号,T2強調画像で高信号,Gd造影で著明な増強効果を有する小指頭大の腫瘤状信号が声門上の咽頭腔に認められた(図3a~d)。
経過:吐出した腫瘤片は当院に持参したために病理組織検査に提出し,さらなる腫瘤の崩壊に伴う窒息を防止するため気管切開術を施行した。吐出した腫瘤の病理組織検査では毛細血管腫の診断であったため,1月21日に全身麻酔下に摘出術を施行した。東北大式開口器で開口し,咽頭後壁の基部をHo-YAGレーザーにて蒸散,切離した。摘出した標本は表面平滑,白色で弾性軟,割を加えると内部は赤色を呈していた(図4)。病理組織検査では吐出塊と同様の毛細血管腫であった(図5a,b)。
術後経過は良好で,気管切開孔閉鎖術を施行し術後第7日に退院した。2004年7月現在,外来にて経過観察中であるが,再発は認められていない。
毛細血管腫は外傷に基づく化膿性肉芽腫(肉芽組織型肉芽腫)と病理組織学的に同一のもので2),本症例は何らかの咽頭損傷が契機となって生じた化膿性肉芽腫がその本態と考えられた。化膿性肉芽腫は成人に多く,手足の皮膚や口腔粘膜に好発するが,下咽頭では稀である。
本症例ではHo-YAGレーザーを用いて出血や合併症もなく摘出することができ,有効な治療法と考えられた。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.