Japanese
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連載 眼の組織・病理アトラス・127
腎性網膜症
Renal retinopathy
猪俣 孟
Hajime Inomata
pp.798-799
発行日 1997年5月15日
Published Date 1997/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410908745
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腎性網膜症renal retinopathyは,広義と狭義がある。広義の腎性網膜症は悪性高血圧症malignant hypertensive retinopathyと慢性糸球体腎炎chronic glomerulonephritisに見られる眼底病変を一括して取り扱う。悪性高血圧症では,発症時から拡張期血圧が異常に高く,急速に全身に重篤な合併症を生じる。眼では,網膜細動脈の著しい狭細化,網膜浮腫,綿花状白斑などが出現する(図1,2)。これは細動脈の循環障害によって局所網膜の虚血を生じ,細小血管からの透過性亢進によって網膜出血や浮腫を生じたものである(図3,4)。このような眼底変化を悪性高血圧性網膜症と呼ぶ。
慢性糸球体腎炎では,網膜動脈の硬化性変化を生じ,細動脈硬化に基づく網膜浮腫,硬性白斑を坐じる。これが狭義の腎性網膜症である。悪性高血圧症は腎障害を伴って網膜症をさらに助長し,慢性糸球体腎炎では全身の細動脈硬化によって高血圧が加わって,網膜症を助長する。すなわち,高血圧と腎障害はいずれも互いに病変を加重することによって網膜症を悪化させるので,検眼鏡所見から悪性高血圧性網膜症と狭義の腎性網膜症を鑑別することは難しい。
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