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定型網膜色素変性症retinitis pigmentosaは,進行性の夜盲,視野障害,視力低下を主症状とする両眼性の遺伝性眼疾患である。初発症状の多くは夜盲で,幼小児期に気づく場合が多い。視力は初期には良好であるが,徐々に障害される。眼底検査で網膜の変性部位は青灰白色を呈し,その中に多数の先端が尖った骨小体様の色素が見られ,一部は網膜血管に付着している(図1)。網膜の変性は赤道に初発し,後極部と周辺部に向かって拡大する。血管は狭細化する。視神経乳頭は末期には萎縮する。視野検査で,輪状暗点,求心性狭窄,島状暗点などの異常が検出される。螢光眼底造影では網膜色素上皮層の萎縮のため,ごく初期に脈絡膜血管の造影像がみられ,まもなくびまん性の過螢光で覆われる。脈絡膜の小血管が萎縮した部では造影欠損が見られ,脈絡膜大血管の造影像が後期まで観察される。暗順応検査は,正常に近い例から,杆体暗順応曲線を欠く症例までさまざまである。ERG検査は早期診断に有用で,眼底の変性所見が軽い時期から強い異常を示すことが多い。
現在,確実な治療法はなく,網膜変性の進行を遅らせる目的で,血管拡張薬,視紅合成促進薬,ビタミンなどが使用される。過度の光は本症の進行を速める可能性があるので,強い光を避け,サングラスを常用する。
初期変化が網膜の血管アーケード付近に始まるように見えるのは,そこでは杵体細胞の密度が最も高いためである。秤体細胞の外節が変性し,ついで内節も変性する。さらに視細胞の核が存在する外穎粒層の配列が乱れ,核は徐々に減少して外穎粒層は菲薄化する。初期には網膜内層にほとんど変化は見られないが,外穎粒層が消失する頃になると,内穎粒層の配列が乱れてくる。神経節細胞層や神経線維層は比較的末期まで保存される(図2)。病状が進むと,錐体細胞も障害される。赤道部に始まった網膜変性は後極部,周辺部へと広がる。
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