連載 眼の組織・病理アトラス・67
眼鉄錆症
田原 昭彦
1
,
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.598-599
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410908462
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眼球内に飛入した鉄性異物が放置されると,その異物から遊出した鉄成分によって眼球の各組織が障害される。この状態は眼鉄錆症ocular sider-osisと呼ばれる。眼鉄錆症では,角膜,前房隅角,虹彩,水晶体,網膜などの眼球の各組織が障害される。臨床的には,角膜の色素沈着,続発緑内障,虹彩の色調の変化,瞳孔反応の減弱,併発白内障,,網膜症などを起こし,視機能に重大な影響を及ぼす。
鉄性異物による網膜症の臨床症状は網膜色素変性症に類似する。暗順応が障害され,夜盲が出現する。求心性の視野狭窄もしばしばみられる。視力障害が徐々に進行し,末期には完全に失明する。眼底検査で,主に網膜の周辺部に黒色の色素が観察される(図1)。病期が進むと網膜の色調は変化し,中心窩反射が不明瞭となる。網膜の動脈は狭細化する。視神経乳頭はしばしば萎縮をきたす。鉄錆症の網膜への影響を知るうえでERGは有用である。初期にa波,b波の振幅は増大し,ついでb波の振幅は減弱する。末期にはERGは消失型となる。
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