特集 緑内障診療ガイド—今日の戦略
Ⅱ.治療の実際
1.薬物治療の実際
炭酸脱水酵素阻害薬
原 浩昭
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科生体機能調節医学専 攻感覚統合医講座視覚病態分野
pp.139-142
発行日 2002年9月10日
Published Date 2002/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410907883
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薬理作用
炭酸脱水酵素(carbonic anhydrase:CA)は,眼を含む多くの生体内組織に存在しており,二酸化炭素の水和,炭酸の脱水反応(CO2+H2O⇔H2CO3⇔H++HCO3−)を可逆的に転換する酵素である。この反応の中の炭酸水素イオン(重炭酸イオン)HCO3−は,ナトリウムイオンNa+の排泄に重要な役割を果たしている。
CAには数種類のアイソザイムがあり,角膜,毛様体,水晶体,網膜,脈絡膜にそれぞれの局在が知られている1)。このうち,眼圧調整には毛様体突起の無色素上皮細胞,色素上皮細胞に存在しているCA—Ⅱが関与しており,炭酸脱水酵素阻害薬(carbonic anhydrase inhibitors:CAIs)は毛様体でのこの酵素を阻害することにより,炭酸水素イオンの生成,後房への輸送を遅延させる。さらに,ナトリウムイオンとそれに伴う後房への水の輸送を低下させることによって房水産生を抑制し,眼圧を下降させる2)。
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