今月の表紙
散瞳により前房内水晶体脱臼をきたしたMarfan症候群の症例
福井 勝彦
1
,
水流 忠彦
2
1旭川医科大学眼科
2自治医科大学眼科
pp.428
発行日 2001年4月15日
Published Date 2001/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410907232
- 有料閲覧
- 文献概要
患者は47歳,女性で,左眼視力0.03(0.1×S−20.0D),眼圧12mmHg,前房は深く清明で虹彩振盪を認めた。水晶体は外側下方に大きく偏位し,散瞳後に前房内完全脱臼を呈し,仰臥位をとらせると水晶体は前部硝子体に戻るのが確認された。身長170cm,指極173cmでクモ指が認められ,手首徴候が陽性であり,心血管系の合併症は認められないが,内科にてMarfan症候群と診断されている。散瞳後に水晶体を前房内に脱臼させ,ピロカルピンで縮瞳させ,強角膜四面切開と圧出法を用いて水晶体嚢内摘出術を施行した。水晶体偏位は,その原因,経過により種々の程度を示すが,脱臼水晶体の散瞳検査が直接の契機となって遊走水晶体を生じた例である。
表紙の写真は,水晶体が前房内完全脱臼した直後にスリット光と背景照明を併用して撮影したものである。細隙灯顕微鏡検査では焦点深度が浅いため眼位をやや内側に傾斜させ,スリット光とカメラの傾斜角を広げて水晶体前嚢から後嚢までの焦点深度を捕捉したが,水晶体内に写り込む光源のキャッチライトを解除することは困難であった。フォトスリットはコーワ社製SC−1200,フィルムはFUJI-RHP (ISO400)を使った。
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.