Japanese
English
連載 眼の組織・病理アトラス・101
成人T細胞白血病の眼内浸潤
Ocular infiltration of adult T-cell leukemia/lymphoma
向野 利彦
1
,
猪俣 孟
1
Toshihiko Kohno
1
,
Hajime Inomata
1
1九州大学医学部眼科学教室
pp.330-331
発行日 1995年3月15日
Published Date 1995/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410904185
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成人T細胞白血病(ATL)はHTLV−I感染者に発症する予後不良な白血病である。日本,特に九州,沖縄はHTLV−Iの濃厚感染地帯で,年間約500人のATL患者が発生する。ATLの眼症状としては,ATL細胞の浸潤による眼窩眼瞼の腫瘤形成,眼内浸潤,眼日和見感染が報告されている。他方,HTLV−I感染者にぶどう膜炎がみられることがある(HTLV−I関連ぶどう膜炎)。このぶどう膜炎とATL細胞の浸潤によるぶどう膜炎症状は全く異なる疾患概念である。
ATLの眼内浸潤は,通常ATLの経過中に生じるが,全身症状が明らかでない時期に眼症状が先行した例がある。ここに示す症例は38歳の南九州在住の男性で,右眼の急激な視力低下があり,初診時に前房混濁,硝子体混濁,眼底全体にびまん性の網膜混濁がみられた(図1)。2週後には左眼にも前房硝子体混濁と乳頭鼻側網膜の限局性の白色滲出性病変が出現し,網膜血管炎を伴っていた。この病変は急速に拡大して乳頭を含み,乳頭浮腫を呈した(図2)。さらに1か月後,行動異常が出現し,急速に意識レベルが低下し,眼症状発現から約3か月の経過で死亡した。死亡の10日前から末梢血にATL細胞が出現し,ATLと診断された。
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