やさしい目で きびしい目で・7
やさしい目で,きびしい目で
松村 美代
1
1関西医科大学
pp.1369
発行日 2000年7月15日
Published Date 2000/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410906944
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昔の眼科手術はつかむ・切る・縫うといった操作に習熟していればよかった。つまり手で手術を行ったわけで,足は顕微鏡操作だけであった。現代の眼科手術は足(つまりフットスイッチ)で行う手術といってもよいくらいだ。両足が自由に動かせるように,ベッドの高さやフットスイッチの配置を調整しておかないとやりにくい。人並はずれて短足である私は,手術室が替わるとベッドと床ばかり見ている。
私が手術の修行を始めたころは,十分低くなる眼科用手術ベッドなどはなく,何でも外科用ベッドで行っていた。つまり立って手術するためのベッドである。初めて術者になる前,ベッドの下から師の声が聞こえてきた。「椅子にすわって,顕微鏡を覗いてみて,椅子の高さを調整して。あ,やっぱり足がぎりぎりだね。つま先立ちでは手術はやりにくいからだめですよ。顕微鏡とクライオのフットスイッチ(当時フットスイッチはこの2つしかなかった)を足台の上におきましょう。どう,このくらいの高さでよいかな? 楽に踏めますか?」指導医は手術ベッドの下にもぐりこんで足台を置いてくれていたのだった! 転勤先での初めての手術室では,いつもこの声が聞こえるような気がしたものだ。
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