特集 眼科検査法を検証する
Ⅴ.網膜・硝子体疾患
眼底検査と前置レンズ—1)細隙灯顕微鏡以外の方法による硝子体網膜境界面の観察
林 英之
1
1福岡大学医学部眼科学教室
pp.166-169
発行日 1998年10月20日
Published Date 1998/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410906099
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なぜ細隙灯顕微鏡以外の方法が必要なのか
後部硝子体剥離やその他の原因によって生じた網膜硝子体境界面の病的変化により,網膜にさまざまな疾患が生じる。そのうち治療の対象となるのは主に黄斑部疾患であり,特発性網膜上膜,硝子体網膜牽引症候群,特発性黄斑円孔,黄斑浮腫の一部などである。網膜硝子体境界面の変化は,一般にゴールドマン三面鏡,もしくは前置レンズと細隙灯顕微鏡により検査され,その対象は硝子体ゲル,網膜表面,そして網膜内の変化に分けることができる。
硝子体はほぼ透明な組織なので,細隙光の幅を細くし,斜照明として網膜神経上皮,色素上皮,脈絡膜など,深層からの反射を少なくして観察する方法が多く用いられる。網膜表層の変化は,しわや黄斑部の歪み,あるいは網膜前の白色の膜として観察されやすい。しかし特発性黄斑円孔や一部の黄斑浮腫の症例などに,細隙灯顕微鏡像ではとらえるのが困難な薄く透明な膜が関与していることが硝子体手術の結果から明らかとなっている。そのような微細な変化を細隙光を細くし光学切片として観察する方法があるが,通常の細隙灯では深層からの反射が強く,観察は容易ではない。また,網膜内の変化も深層からの反射と内部散乱のため,詳細な観察は熟練を要する。また細隙光による方法をとるかぎり観察できる画角は狭く,また細隙灯顕微鏡は焦点深度が浅いため,境界面の変化を広範囲にわたってとらえるには,検者の熟練を要する。
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