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大学医学部の眼科学教室なるものは一体どれほどのもので,どれほどのことができるのだろうか。教授1,助教授1か2,講師2か3,助手が6〜10の定員だとして,都合単純に足せば10〜16人が,もし精鋭だとしても,研究,教育,臨床の全てにわたるとなると,たいしたことはできそうにない。現実には一騎当千の輩はすでに死に絶えて久しいか,ただの伝説にすぎないから,ほとんど何もできないと思えるし,実際何もしていない居眠り教室もあるとの噂すらあるそうだ。実は筆者も居眠りをしている。研究,したくもない,教育,無駄骨だ,臨床はまあ趣味程度。まさに居眠り以外のなにものでもないが,ほんとうのところ目を覚ますのが恐ろしいのである。もし目が覚めたら,日本には眼科学教室が7つしかなく,それぞれが基礎,臨床各部門の専門家を多数抱えていて,筆者は,東海地方唯一の医学専門学校である愛知医専の附属長久手分院—他に鶴舞,浜松,岐阜分院などたくさん—で,眼科手術テクニシャンとして,こき使われる毎日であるはずだ。くわばらくわばら。けっして目覚めますまい。
近年,ビデオ教材,いや狂材かもしれない,が多数あって,容易に手術手技—手術ではない—を学べる,いや語源はおそらく同じ,真似ることができるようになった。超音波白内障手術と眼内レンズ挿入手術はちょっと器用な眼科医なら簡単に習得してしまうことができる。まあここまではいい。しかし,白内障とはいえその診断は決して簡単なものではない。白内障の存否を誤診することは稀だろうが,それ以外の病態を見落とす,というより知識も興味もないから診断のつけようがないのではないかと,某氏が恐れていたという話を聞いた。それでも手術を教えなければならない立場にいるのはつらい。なんとかに刃物というではないか。実につらいものがある。
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