Japanese
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連載 眼科図譜・306
外傷によると考えられたアカントアメーバ角膜炎の1例
Acanthamoeba keratitis in a patient without contact lens wearing history
加畑 隆通
1
,
石橋 康久
1
,
本村 幸子
1
,
石井 圭一
2
Takamichi Kabata
1
,
Yasuhisa Ishibashi
1
,
Sachiko Hommura
1
,
Keiichi Ishii
2
1筑波大学眼科
2法政大学生物学研究室
pp.6-7
発行日 1992年1月15日
Published Date 1992/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900978
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- Abstract 文献概要
緒言 アカントアメーバ角膜炎は,本邦においては石橋ら(1988)1)が報告して以来,報告例が増加している。本症の多くはコンタクトレンズ(以下CLと略)装用者に発症しており2〜4),本症とCLとの密接な関係が示唆されている。しかし,CL装用者以外にも本症の発症があり,本症の患者のうち,Jones (1986)の報告3)では17%が,またStehr・Green (1989)らの報告4)では15%がCL装用者以外に発症している。筆者らはCL装用者以外に発症した,外傷によると思われるアカントアメーバ角膜炎を経験したので報告する。
症例 患者は39歳の男性で,左眼の視力低下,疼痛,流涙を主訴に受診した。現病歴は農業機械の整備中に左眼の異物感を自覚し,その後,左眼の充血,流涙,霧視が出現したため,近医を受診。角膜ヘルペスと診断され,治療を受けたが症状が悪化したため,別の眼科医を受診。そこでアカントアメーバ角膜炎が疑われ,紹介により筑波大学眼科を受診した。初診時所見では左眼の視力は0.02矯正不能であり,角膜の中央に直径約6mmのほぼ円形の白い混濁をみた(図1)。白濁は角膜実質の浅層に限局していて,混濁部の中央の実質には浮腫があった。また混濁部の上皮は不整であったが,上皮欠損や潰瘍は形成していなかった。
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