連載 眼の組織・病理アトラス・63
原発性蓚酸尿症
坂本 泰二
,
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.10-11
発行日 1992年1月15日
Published Date 1992/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900979
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原発性蓚酸尿症primary hyperoxaluriaは,グリシンの代謝酵素欠損のため全身の蓚酸の濃度が増加し,蓚酸カルシウムが全身諸臓器に沈着する稀な疾患である。臨床的には,蓚酸カルシウムの沈着臓器によりさまざまな症状を呈するが,腎不全で死亡することが多い。本症は,常染色体劣性遺伝の形式をとり,幼少時より発症する。
眼組織では,蓚酸カルシウムは角膜,結膜,虹彩実質,毛様体上皮,網膜,視神経に沈着し,それに伴ってさまざまな眼症状を呈することが報告されている。このうち,網膜への沈着がもっとも高頻度にみられ,しかも視機能に直接影響する場合がある。沈着物が,黄斑以外の部に存在する場合には視力にあまり影響しないが,病変が黄斑に及ぶと著しい視力障害を起こす。また,比較的稀ではあるが,視神経に沈着する場合にも視力障害の原因となりうる。検眼鏡所見としては,後極部眼底にflecked retinaといわれるように黄白色点状沈着物が(図1),または黄斑を中心に黒色斑状の小病変が散在する。
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