文庫の窓から
眼科学(上・中・下)河本重次郎 著
中泉 行信
,
中泉 行史
,
斎藤 仁男
1
1研医会
pp.1473-1475
発行日 1990年9月15日
Published Date 1990/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900364
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わが国の幕末から明治の初めにかけては,欧米の医書の翻訳が盛んに行われたが,本邦人自らの著述は稀で,ことに眼科学の分野に至っては極めて少なかったようである。本書は19世紀末より20世紀初めにかけての邦人原著の眼科書として,わが国で最も多く版を重ねて出版されたものである。
本書の著者,河本重次郎(1859〜1938)氏については揺籃期の日本近代眼科の父として,あまりによく知られた人であるが,明治18年(1885)眼科学研究のため,宮下俊吉(1860〜1900)氏,大西克知(1865〜1932)氏等とともにヨーロッパに留学し,マンツ(Willhelm Manz)氏,ミッヘル(Julius von Michel)氏およびフックス(Ernst Fuchs)氏等に師事し,その実証的な眼科研究に共鳴して,明治22年(1889)3月,留学を了えて帰国し,同年6月1日に帝国大学医科大学の教授に任ぜられ,その10月より眼科学講義を担当した。講義は,眼科学講義,検眼鏡用法,臨床講義,外来患者臨床講義(但し,検眼鏡用法は甲野棐助教授,明治36年以降,中泉行徳助教授受持)の4科目であったが,河本教授は就任してから数年間は教科書として特にまとまったものは用いなかったようで,恩師マンツ教授の外,西欧眼科の碩学の著書を取捨して講義案を作成して学生に授けたと伝えられている。
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