銀海余滴
河本重次郎先生の思い出(3)
杉田 正臣
pp.555
発行日 1960年2月15日
Published Date 1960/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410206893
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先生の書簡から
河本先生から父が戴いた書簡は20通以上でそれを1巻の巻物として珍蔵しているが,其中から先生の面目躍如たりと思わるるものを成るべく原文のまま抄記する。
(前略)迂生愈々近来,持病頻発,身躯日々衰フ,只精神ノ聊常健ナルヲ喜ブノミ。今日東京大雨沛然,昨日休日ナレバ上野向島ノ観桜ノ客非常ニ多ク,満目只人アリテ花ナキガ如シ,戦勝之国民真ニ余裕アリト云フベシ。粉瘤一件委細承知,迂生モ両三回実験アリ,又他人ノ例モ仄聞ス,併シ粉瘤ヲ摘出スルハ数々有害ニシテ危険アリ,其後外反症ノ起リシ例アリ,故ニ只瘤ヲ切開シ鋭ヒヲ以テ掻爬シ置ケバ可ナリ,必シモ再発ヲ見ズ。今日又瘤之標本至ル,後日切片ヲ作リ見ン(後略)
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