連載 眼の組織・病理アトラス・47
毛様体炎膜
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.1388-1389
発行日 1990年9月15日
Published Date 1990/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900346
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眼内に炎症が持続すると,毛様体扁平部または鋸状縁網膜と毛様体扁平部との移行部から炎症細胞や新生血管を含む眼内増殖組織が形成され,それが毛様体の表面,さらに水晶体の前後面,ときには瞳孔領まで広がる。これを毛様体炎膜cyclitic membraneと呼ぶ。慢性の虹彩毛様体炎で眼球癆におちいった眼球の割面を作ってみると(図1),毛様体炎膜は非常に硬い結合組織からなっている。したがって,毛様体炎膜はかつては毛様体炎性硬皮とも呼ばれていた。毛様体炎膜の基部は,硝子体基底によって周辺部網膜に強固に固定されているので,この増殖組織の収縮によって周辺部網膜が牽引されて剥離する(図2,3)。
眼内増殖組織の形成とそれに引き続いておこる牽引性剥離は,眼内の炎症のみでなく,穿孔性眼外傷(図4),糖尿病性網膜症,難治性網膜剥離の後などにもしばしばみられる現象である。最近では,これを前部増殖性硝子体網膜症 anterior PVRとも呼ぶ。前部増殖性硝子体網膜症は,増殖性硝子体網膜症 proliferative vitreoretinopathy(PVR)のうち,網膜内境界膜の前面や剥離した硝子体の裏面に増殖組織が形成されておこる後部増殖性硝子体網膜症posterior PVRとは増殖組織の広がる範囲が異なることからそれと区別して名づけられたものである。
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