増刊号 すべて見せます! 患者説明・同意書マニュアル—[特別Web付録]説明書・同意書の実例99点
8 角膜
全層角膜移植
山口 剛史
1
1東京歯科大学市川総合病院眼科
pp.116-118
発行日 2020年10月30日
Published Date 2020/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410213757
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手術・治療の概要
全層角膜移植は,角膜の病変部を切除して全層ドナー角膜組織と置換する術式で,光学的(角膜を透明にする)と治療的(穿孔部を補強する)移植がある。代表的な適応疾患は,角膜実質混濁と角膜内皮機能不全,角膜穿孔などである。今は,角膜内皮疾患は主に角膜内皮移植で治療されるが,実質混濁や瘢痕のある症例では全層角膜移植が適応となる。全層角膜移植は1900年代初頭から始まった最も歴史のある組織移植の1つで,1950年代にステロイド点眼,1970年代の近代顕微鏡手術・縫合糸・角膜組織保存法が臨床応用され,予後が改善し普及した。
全層角膜移植は,経過が良ければ視力が改善し患者に喜んでもらえるが,重篤な術中・術後合併症が起きると,術前よりも視力が低下し,「こんなはずじゃなかった」と患者を不幸にすることもある。全層角膜移植では,他の角膜移植の術式と比較して,①適応疾患が広く術前状態が患者によって異なる,②手術中にオープンスカイとなるため,水晶体・眼内レンズ(IOL)の脱臼や脱出,駆逐性出血など重篤な術中合併症があること,③拒絶反応や緑内障,感染症など術後の合併症の頻度が高いことが挙げられる。これらの説明は,患者との信頼関係の構築だけでなく,患者の病気への理解を深めることで術後合併症の予防や早期受診・早期発見につながるためにも重要である。
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