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はじめに
角膜移植術は,約30年前は全層角膜移植術,表層角膜移植術の2種類のみであった。しかし,20数年前から始まった角膜移植の進歩は目覚しく,あっと言う間に悪い部分のみ取り替えるパーツ移植の時代となった。上皮細胞のみが悪いStevens-Johnson症候群,幹細胞疲弊症,広範囲の角膜化学熱傷などにはkeratoepithelioplasty,角膜輪部移植などが積極的に行われるようになり,良好な成績が報告されている。
角膜実質のみが悪い角膜ジストロフィや円錐角膜の場合は,自己の内皮細胞とDescemet膜は残して,上方の実質と上皮を移植する深層角膜移植(deep anterior lamellar keratoplasty:DALK)が行われる。Descemet膜の穿孔,2重前房のリスクはあるが内皮型の拒絶反応のリスクはなく術後管理は容易で有効な方法である。
角膜内皮のみが悪い水疱性角膜症の場合は,内皮細胞のみを移植する角膜内皮移植(Descemet stripping automated endothelial keratoplasty:DSAEK)が行われる。この方法は,手術の難易度は高いが,角膜に縫合糸が必要ないため術後視力が大変良好で患者の満足度も高い非常に優れた手術である。
パーツ移植は非常に優れた方法であるが,すべての症例がパーツ移植の適応になるわけではなく,全層角膜移植が必要となる疾患は多く存在する。角膜穿孔や角膜真菌症での治療的角膜移植などが代表的なものであろう。角膜専門医は,まず全層角膜移植を完璧にマスターすることが求められており,その後に各種パーツ移植に精通する必要があるのではないかと考える。全層角膜移植はオープンスカイの状態となるために,水晶体脱出,駆逐性出血などのリスクが伴う。安全,確実な手技を獲得しておくことは非常に重要である。
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