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はじめに
多くの疾患は,個人のもつ遺伝素因に環境因子が加わることで発症する多因子疾患である。多因子疾患の発症にかかわる体質を司る遺伝要因の1つとして,遺伝子多型(single nucleotide polymorphisms:SNPs)が挙げられる。近年,ゲノム解析技術は凄まじく進歩しており,SNPs解析についても,候補遺伝子アプローチに続いて,全ゲノム関連解析,最近では,次世代シーケンサーを用いた全エキソーム解析,さらには,全ゲノムシーケンス解析さえ可能になってきている。このようにゲノム研究が急速に進歩するなか,眼科でもゲノム研究を行っている先生方が多数おられる。
2016年11月3日,第70回日本臨床眼科学会のSIGとして,第17回眼科DNAチップ研究会がグランドプリンスホテル京都で開催された。本研究会では,横浜市立大学の石原麻美先生にサルコイドーシス疾患感受性遺伝子について,京都府立医科大学ゲノム医科学の中野正和先生にフックス角膜内皮ジストロフィのゲノムワイド関連解析について,京都大学の仲田勇夫先生に遺伝性視神経症に対する次世代シーケンサーを用いた遺伝子診断パネルの使用成績について,東北大学東北メディカル・メガバンク機構ゲノム解析部の布施昇男先生に1,070人全ゲノム解析からみえた眼科疾患の保因者頻度についてご講演いただいた。また,筆者もジャポニカアレイを用いたスティーブンス・ジョンソン症候群のゲノムワイド関連解析について講演を行った。
さらに教育講演として,ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社の田澤義明先生に,実際に癌の診療で用いられているゲノム検査について講演いただき,それぞれについて熱心な討論が行われた。本稿では,5つの講演ならびに教育講演の要旨を報告する。
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