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多くの疾患は,個人のもつ遺伝素因に環境因子が加わり,疾患が発症する多因子疾患である。多因子疾患の発症にかかわる体質をつかさどる遺伝要因として,遺伝子多型(SNP)が挙げられる。最近まで,一般的な多因子疾患(common disease)の発症には昔に発生した多くの個人で共有されるcommon variantsが関与しているという“common disease-common variants仮説”のもと,全ゲノム関連解析(genome-wide association study:GWAS)が精力的に行われてきた。しかし,common SNPによるGWASでは,予測された発症率の一部しか説明できないという事実に直面し,common diseaseの発症には多くのrare variantsが関与しているとする“common disease-rare variants仮説”に考え方が大きく変化してきている。それに伴い遺伝子解析の手法も,全ゲノムのcommon variantsを検出するGWASから,次世代シーケンサーを用いたrare variantsの解析にシフトしてきている。
第68回日本臨床眼科学会のSIGとして,第15回眼科DNAチップ研究会が神戸国際会議場で開催された。本研究会では,眼科領域では,山梨大学の櫻田先生に“臨床における加齢黄斑変性遺伝子多型の活用法”について,京都大学の大石先生には“Targeted exome sequencingによる遺伝性網膜変性疾患の網羅的遺伝子検索”について,横浜市立大学の石原先生には“サルコイドーシスのゲノムワイド相関解析”についてご講演いただき,京都府立医科大学の上田は“感冒薬によるStevens-Johnson症候群のGWASならびに国際サンプルを用いた検証”について講演した。さらに,東京大学医学研究科人類遺伝学分野の徳永先生に,教育講演として“Complex diseasesの遺伝研究:現状と課題”についてご講演いただいき,それぞれについて熱心な討論が行われた。ここでは,4つの講演,ならびに,教育講演の要旨を報告する。
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