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はじめに
眼窩,眼形成を専門としない通常の研修を受けた眼科医師の涙道疾患(特に涙道閉塞症)とのかかわりは「涙囊洗浄(いわゆる涙洗)」や「先天性鼻涙管閉塞のブジー」が代表的です。前者は検査として涙管通水(D277)といわれたり,処置として涙囊ブジー(洗浄含む,J092)といわれたりする,鈍針での涙道洗浄手技です。後者は特に専門家でなければ現在無理にブジーせず経過観察でもよいのではという論議がなされています。
実際の眼科診療では涙目(流涙症,涙道閉塞症)の患者数はきわめて多く〔特に高齢者(診断は前回の鶴丸先生の稿を参照)〕,対処としては投薬のみ,または涙洗処置を行うのみ,ということで,この疾患は根本的な治療が難しい不治の病として扱われていることが多いのが実態です。
そもそもが人間の体で健常であるべき粘膜管腔が塞がったままになるという不思議な病態であり,そこに感染を併発してしまったりと,もっと病因や原因を探り,予防ができるようになるべきなのですが,その道は遠そうであり,対処が精一杯なのが現状です。その現状への対処で涙洗から一歩進んだのが涙管チューブ挿入術です。これはすばらしい進歩でしたが,盲目的涙道ブジーと盲目的涙管チューブ挿入の組み合わせによっていたため,症例により仮道を作ってしまう可能性がなくなりませんでした。
「涙道の中を見たい!」「涙管チューブを仮道でなく確実に涙道に留置したい!」それは多くの眼科医がもっていた夢でありました。他の部位で考えると,胃疾患へのアプローチは皮膚側から胃カメラによる内視鏡診療ですむことが増えてきました。涙道は,“涙カメラ”はなんとかならないものか? これは実際には一部で開発が進み,2002年頃から実用可能となっています(図1〜3)(涙道内視鏡は鼻内視鏡と組み合わせて使用されます)。しかし敷居が高いという声もよく聞き,一般的に広まっているとは言いがたい状態です。とはいえ,涙道を直接観察できるという利点はやはり何物にも代えがたいと思います。興味のある先生は,①フォーサム日本涙道・涙液学会総会涙道内視鏡スキルトランスファー,②D & D東京涙道機械展示,③メーカー各社へのデモ依頼,④教科書「涙道内視鏡入門!」1)などにアプローチしてみるとよいと思います。
涙道内視鏡の導入は簡単なのかという質問には,「やる気と根性があれば必ず克服できます」と答えることにしています。少なくともブジーの経験者ならば必ず取りかかれるはずです。なぜならカメラ機能のついたブジーを入れるだけですから! わからなくなれば目を閉じて盲目的ブジーに戻るだけです。ドンマイドンマイ! しかし実際には,特に最初は,小さな問題が起こることもあるのですが…しばしば。講演会などで目にする涙道内視鏡や鼻内視鏡の画像は非常に勉強になりますが,解剖などに慣れないと何を見ているのかわからないことも多いと思います。ある程度の慣れが必要なのは他の眼科の手技と同様ですが,破囊して眼内炎,などのような厳しいことは鼻の処置(喉につながっているので呼吸にかかわる)を除けばあまり考えなくてよいと思います2,3)。
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