特集 近代化,プロ化をめざして
群馬の保健婦の一つのあゆみ
精神に取り組んで
精神病は不治の病と思っていたのに
吉川 クメ
1
1群馬県勢多郡赤城村役場
pp.98-100
発行日 1973年2月10日
Published Date 1973/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205222
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放置されていた患者
10年前までは,精神の患者や家族に対して,働きかけなどできなかった。私たちも精神病は入院治療のほかに,治癒の方法はないものと思っていた。部落を訪問していると,ときおり放浪患者を見かけたものである。私たちを見ると逃げてしまい,話すこともないまま困ったものだと思っていた。家族に聞いても,悪いこともしないでいるしほっておくよりしかたないという。良い治療法はないのかと考えていた。入院は費用の点を思うと案じられて勧められない。
そのころは国保も半額自己負担だったから,どこの家庭もたいへんである。精神衛生法がもっと増額されたらといつも考えていた。患者のことで近所から苦情がでたり,家族も手におえなくなって,おまわりさんや保健婦のところに知らされて,はじめて家族と入院の相談がなされて入院となる。精神衛生保護申請も保健婦が手助けして出す。公費で入院が認められると,家族もホッとする。保健婦はこれで精神衛生活動を大いにやったつもりであった。公費が認められないと,生保,医療保護になる所得の点などで民生委員や福祉の人たちと,扱うメンバーが加わり,こうして保健婦の仕事も理解される。
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