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特集1 脈絡膜と網膜疾患
脈絡膜循環と糖尿病
Choroidal circulation in diabetic retinopathy
長岡 泰司
1
Taiji Nagaoka
1
1旭川医科大学眼科学講座
pp.142-147
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410211215
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はじめに
これまで糖尿病網膜症における眼循環動態に関しては,レーザードプラ法を用いた網膜循環測定による臨床研究が30年以上前から行われており,多数の報告がなされてきた。筆者ら1)もレーザードプラ眼底血流計(laser Doppler velocimetry:以下,LDV)を用いた臨床研究で,2型糖尿病患者では網膜症のない段階からすでに網膜血流量が低下していることを報告した。他にも同様の報告が多数あり,糖尿病網膜症の発症・進展に網膜循環障害が関与していることが示唆される。
一方,糖尿病網膜症における脈絡膜循環の研究は非常に少なく,これまで詳しい検討がなされていなかった。それは,網膜血管は非侵襲的に観察可能であるのに対して,脈絡膜血管は直接観察することができないことが主な原因であった。最近の光干渉断層計(optical coherence tomography:以下,OCT)の目覚ましい発展により,脈絡膜を非侵襲的に可視化できる時代になり,脈絡膜の形態学的変化を定量的に評価することが可能となり,多くの研究者の関心を脈絡膜に集め,糖尿病網膜症を含めたさまざまな病態で脈絡膜が肥厚・菲薄化することが明らかとなった。その脈絡膜の形態学的変化の説明として脈絡膜循環の変動が予想されているが,実際両者がどのように関連しているかは明らかではなく,今後のさらなる研究の発展が待たれる。
本稿では,脈絡膜循環の基礎知識を整理したうえで,これまでの報告を元に,現時点で理解できる範囲内で,糖尿病網膜症における脈絡膜循環動態についてまとめてみたい。
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