連載 眼の組織・病理アトラス・25
脈なし病
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.1212-1213
発行日 1988年11月15日
Published Date 1988/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210538
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橈骨動脈で脈が触れず,網膜動静脈の花環状吻合がみられる状態を脈なし病pulseless disease,高安病Takayasu's disease,または高安・大西病Takayasu-Ohnishi diseaseという.しかし,橈骨動脈で脈を触れない患者でも必ずしも典型的な眼症状を示すわけではない.最近では,大動脈の狭窄で末梢の乏血症状がみられるものをすべて一括して大動脈炎症候群aortitis syndromeと呼んでいる.脈なし病もその範疇に含まれる.
大動脈炎症候群は日本人に比較的多くみられ,膠原病など血管炎をもつ20歳代から30歳代の若い女性に発症する.主として大動脈弓の炎症性狭窄が原因で、内頸動脈さらに眼動脈の慢性的な乏血を生じ,初期には眼底周辺部の動静脈吻合や毛細血管瘤の形成などがみられる.病変が進むと,乳頭周囲動静脈花環状吻合,血管新生緑内障,併発白内障などを起こして失明する.
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