特集 トラコーマ
綜説
トラコーマの免疫学的研究—(其の一)トラコーマ患者の補体結合反応に就て,他
柏井 忠夫
1
1京都府立医大
pp.1604-1620
発行日 1957年12月20日
Published Date 1957/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410206210
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緒言
1950年荒川,北村氏が,始めてトラコーマ(以下トと略す)病毒をマウス脳に分離固定に成功し,更に,これらの病毒の孵化難卵培養が可能である事を発表した。更に上野等は,同様な方法でト病毒の固定に成功し,更に,同固定毒を,マウス脳内,並に腹腔内に接種する事により,脳,肺肝にヴイルス(以下ヴと略す)性炎に一致する病理組織学的所見を証明し,同固定毒の感染は,全身性のものであり,ヴィレミーの基盤の上に成立するものと推定し,高橋は,早期ヴィレミーなる事を,動物実験にて,証明した。
以上,トも多くのヴ性疾患と同様,病変は,一局部に限局していても,トに対する抗体が,血清中に存在する事が推定されるのであるが,Romer(1908)以来,多くの学者が,生体内の抗体産生の事実を証明しようとして,多大の努力を払つて来たのにも拘らず,今尚満足すべきものが出来ず,抗原抗体反応を臨床的に応用するまでには至つていない。
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