眼科醫の知識
最近のトラコーマ研究
中泉
pp.551
発行日 1950年12月15日
Published Date 1950/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200747
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荒川氏・北村氏はマウス脳にトラコーマヴイルスを固定するという画期的の仕事に成功した.この分離したヴイルスが眞のトラコーマヴイルスであるかどうかということを決定することが第一の問題となつた.
荒川・北村氏等はトラコーマ患者の血清はこの分離したヴイルスを中和するけれども,健康者の血清は中和能力が無いことを証明した.これで分離したヴイルスが眞のトラコーマヴイルスらしい事がかなり確かになつた.次に分離したヴイルスが人の結膜にトラコーマをおこすことが出來るかどうかが研究された.併しこの試みは概ね失敗に終つた.北村・三井氏等の努力にも拘らず,現在までに少くとも確実にトラコーマを発症させ得たという症例は得ることが出來なかつた樣である.動物に分離固定されたヴイルスが人体に対する毒性を弱め又は失うことは痘瘡,狂犬病などすべてのヴイルスに共通の事であるからさしつかえないとしても,分離したヴイルスの本態をきめる上には何か別に強力な手段を求める必要に迫られた.
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