特集 眼科臨床の進歩Ⅲ
環境と眼
製鉄工場と眼
属 將夫
1
1日医大眼科
pp.671-687
発行日 1955年4月15日
Published Date 1955/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202202
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眼の傷害,疾病の発生は職業と密接な関係を有し,特殊な作業又は環境によつて差異のあることは論を俟たないところである。かゝる特定の事業場に奏ける眼の傷害,疾病の実態を正しく認識し,把握してこれらの予防並びに治療に当つて,適切な処置を講ずることは極めて重要なことゝ云わねばならない。
製鉄工場と言うも,その成品,作業工程,作業環境等は各事業所により異つており,之を一律に論ずることは困難である。八幡製鉄所は本邦屈指の鉄鋼一貫メーカー工場であり,その主作業たる高炉,平炉,圧延の外に,副生産としてセメント,煉瓦工場及び硫安,ベンゾール,タール酸等の化学成品工場を有し,更に運輸関係の鉄道,船舶があり,従業員の職種も極めて広汎に亘る綜合産業工場であつて,製鉄工場としてのあらゆる面を代表し得ると云うも過言ではないと思われる。以下八幡製鉄所に於ける資料に基いて,眼の傷害,疾病,その他に就て統計的,文献的検討を試みてみたい。幸にこの小著によつて,製鉄工場という特殊事情場に於ける,眼障害の大略を御賢察願えれば著者の満足之に過ぐるものはない次第である。
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