特集 眼科臨床の進歩Ⅲ
環境と眼
急性春季カタルと花粉
小口 昌美
1
,
内木 久郞
1
1日本医科大学眼科
pp.688-694
発行日 1955年4月15日
Published Date 1955/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202203
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所謂春季カタルは比較的稀な慢性の疾患とされ諸家の報告の如くに,その頻度は外来患者数の0.001%〜0.3%とされている。本病の原因及び本態に就ては種々の説があるが,未だに解決するに至つていない。その原因説の主なものは,迷走神経緊張説,体質的殊に内分泌に関係ありとするもの,及び結膜のアレルギー性炎症説である。此外結核殊に気管支の結核を重視するもの,或は物理的刺戟例えば光線,温熱に関係を求めんとするもの等枚挙に遑はないが,その何れも春季カタルの全般或は個々の症状を充分に説明し盡すものはない。併し乍ら上述の諸説のうち結膜のアレルギー性炎症説は最も多くの支持を得ている。且つその抗原に就ては花粉感作説が最も重視されている。
飜つて文献の記載を見るに春季カタルの初発症状に就ては曖昧の点が多く,恰も始めより従来記載された結膜所見が発病し,且つそれが慢性に経過するが如き感じに打たれる。斯る初発症状の検索を忘却しているが如き点が本症の原因或は本態を不明とする原因の一つであろう。
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