Japanese
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臨床実験
ヒステリー性眼症状の統計的觀察
A statistic observation about the ocular Manifestations of Hysteria
小林 淸房
1
1千葉大学医学部眼科教室
pp.947-952
発行日 1954年9月15日
Published Date 1954/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201979
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ヒステリーは今日尚その本態に就いて定説を見ない疾患に属するが,古くCharcot以来の「ヒステリー大発作とヒステリー特徴の典型的病像を有する疾患」と言う考え方は今日では「一種の神経症もしくはヒステリー性格」なる語に置換えられつつある様である。ヒステリーの精神症状は暫く置き,その身体症状に至つては誠に多種多様を極め特にそれらが暗示性に富むが故に検査時の状態によつて変幻常ならず,複雑な様相を呈する。ヒステリー性身体症状の一部を占める眼症状は感覚運動障害として観察する時甚だ興味深く且診断的意義も大きい。之を成書に見ても眼科的疾患に於て起り得るあらゆる症状が見られると言つても過言ではないが,この中特に広く知られ又興味をひくものはヒステリー性弱視乃至黒内障,求心性視野狭窄,色視野の倒錯現象,螺旋状視野狭窄,眼瞼下垂,複視等であろう。之等の眼症状に就ては既に多くの報告があるが,その統計的観察は外国に於てもWissmann11)Eszenyi6)の報告があるに過ぎず,本邦に於ては大野・田那村両氏1)によるものを除けば他は少数例の観察に止つている。私は今回千葉大学医学部眼科に於て過去約22年間に見られたヒステリー患者84例に就て統計的観察を試みた。勿論ヒステリーの本質から見て,一回の検査を以て充分となすわけにはいかないが,実際問題として凡てのヒステリー患者に就て数回の反復せる検査を行う事は難しい故この点は止むを得ないと思う。
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