銀海餘滴
我国の社会保障制度の現状
pp.355
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201800
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我国では未だ一貫した社会保障制度は確立されていないのが現状です。然し個々ばらばらではありますが,健康保険や国民保険があつて,病気という生活の危機に対する保障の制度は或る程度できている事,又厚生年金保険や恩給制度があつて或る程度老人の生活保障制度が整つている事は皆さんよく御承知でしよう。更に消極的な最低生活保障として,生活保護法に依り,生活扶助その他各種の扶助がなされている事も説明を要しないと思います。
このように並べてみると,社会保険の面でも,又生活保護の面でも,尠くとも制度としてはかなり充実していて,諸外国に較べて決しておくれていない。むしろ「アメリカなどよりも進んだ面がある」と自慢したくなる人もある程です。然し,理想的な英国等に較べて見ると,又我国の現状を少し細かく分析して見ると決して満足すべき状態でるあどころか,未解決の問題が山積しており,我国の社会保障制度は極めて立おくれているといわなければなりません。その最も問題になる点は,社会保障制度の中核である筈の社会保険が充実していないで,二次的消極的な生活保護ばかりが大きな役割を果している事です。これは病気のため生活保護をうける人が多く,又未亡人が多い事からも察しがつきます。即ち,もし夫の疾病保険,未亡人年金の制度が充実していれば,生活保護をうける人は激減するでしよう。
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