特集 眼科臨床の進歩Ⅱ
結膜
トラコーマとアレルギー
弓削 経一
1
1京都府立醫大
pp.771-781
発行日 1953年11月10日
Published Date 1953/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201633
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Ⅰ.トラコーマ・アレルギーの意味するもの
『トラコーマの病變の中に,トラコーマ・ビールスをアレルゲンとするアレルギーが,ひそんでいる』ということがわかつたとしたら,トラコーマ問題はどの樣になるであろうかということを考えて見よう。トラコーマは,此頃ではトラコーマ・ビールスによつて起る結膜の特殊炎症ということになつている。然しトラコーマは夫れ以上分析せられていない。結核は結核菌による特殊炎症であるが,アレルギーを中心としての分析によつて此樣な定義はもはや定義とはならない所へ來ている。故にトラコーマにもアレルギーが關係しているとすれば,今日のトラコーマの理解の程度はまさに,Pirquet以前の結核についての夫れに等しい。此樣なたとえを持出して來ると,アレルギーを中心としてのトラコーマの分析をすゝめる事はPirquetによつて開かれた結核病學の進歩に似ていると了解せられるであろう。即ちトラコーマにもトラコーマ特異のアレルギーが關係しているとしたら,トラコーマは今日の結核病學にも比べられる展開をうけることになるであろう。
然し,トラコーマ・アレルギーなるものがあるかどうかは未だわかつていない。此樣な推定が可能であるかどうかという問題が之からのべる事柄である。
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