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Ⅰ.緒言
長年に亘つたトラコーマ(以下トと略す)の臨床観察は,トの性格がアレルギー(以下アと略す)性疾患ではあるまいかと言う推理を私に持たせるに至つた。その後,この様な観点に立つて,トの臨床経過を今一度解析し,更に実験的にトの本態をなす抗元抗体反応の証明に努めて来た。先年,その成果をまとめ,「トア」16)と題して綜説を発表した。当時私は,トのア性々格について,尚充分な根拠を収めるには至つていないが,之を確信すると述べたが,今も尚変る処がないばかりか,一層その信を強めている。
トが他のヴイールス(以下ヴと略す)性疾患と同様,ア化疾患と考え得る以上,そこに営まれる抗元抗体反応は,一方に於てア性反応を表示すると共に,他方,免疫現象をも表現するに相違ないことは推定に難くない。アと免疫との両者に関する一元論的解釈は,最早今日では常識的であるからである。然しトの免疫現象は,臨床的にこれを明確に捉えようとしても,却々困難である。従来多くの研究者がトには絶対的な免疫は成立しないとして,それ以上には論及していないのも,この辺りに理由があるようである。絶対免疫についてのこの見解には誰も反対しないであろうが,これがうのみにせられて,トには免疫は認められないと,頭からこれを否定してかかる傾向が,今日尚強いようである。確かに,トの免疫の実証は今日不確かではある。然し不確であると言うことは物事の否定には結び付かない。
Immunity of the trachoma is still an unsolved problem. However, considering from my standpoint that trachoma shows an allergic character, immunity of the trachoma can be easily acknowledged. Namely, both allergy and immunity phenomenon are a different representation based on the same antigen-antibody reaction.
Clinically, natural course of the trachoma is very complicated when no treatment is admin-istered. We could experience not only the interruption of the advancing symptoms, but also the spontaneous recovery or healing. Therefore we can consider the existence of antiforce which was acquired by the body.
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