臨床實驗
暗點の神經眼科學から見た球後視束炎と多發硬化の關係
桑島 治三郞
1
1東北大學分院眼科
pp.232-235
発行日 1953年6月15日
Published Date 1953/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201508
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〔Ⅰ〕cecocentral scotoma
さきに私は球後視束炎とcecocentral scotomaとの關係についてのべたが1),この用語の邦譯は「盲斑(盲點)中心暗點」というのが普通のようである2),3)。しかし私がことさら邦譯をさけて歐語のまゝで用いたのは,これを「盲斑中心暗點」と譯して一應そのまゝ通用する場合と,必ずしもあたらない場合とがあると思つたからである。
もともとcaecalisというラテン語の原義は,ふくろ路のことであり,轉じて醫學用語としてはもつぱら盲腸の意味につかわれている4)。cecocentral scotomaとか,或いはcentrocecal scotomaというときのcecoあるいはcecalの原義もこれに發しているのであつて,これだけを切りはなせばこの言葉の内容それ自身にはMari-otteの生理的暗點と特別の關係をもつのではない。たゞこの生理的な暗點につらなる型の中心暗點(わが國で石津の暗點と稱する形のもの)をcecocentral scotomaとよぶから,これを盲斑中心暗黙と邦譯することはその事實のうえでは少しもまちがいではないし,また網膜面でcecocentral areaというとき乳頭黄斑部の領域を指すこともまちがいない事實である5)。
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