臨床實驗
球後視束炎と脚氣との關係における基本的問題—特に多發硬化症との關係について
桑島 治三郞
1
1東北大分院眼科
pp.750-753
発行日 1952年10月15日
Published Date 1952/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201286
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上記の問題を論ずるに當つてまず用語上の混亂をさけるために球後視束炎の概念を一應あきらかにしておく要がある。私がここにいう球後視束炎とはWalshにならい,球後において外膝状體までの視路中,いずれの高さを問わず乳頭黄斑線維束が選択的に急性ないし慢性炎性機序に犯されているものを指す。即ち鞏膜節板より後方の有髄神經集束部に病巣の原發したものであり,その臨床像は,通常,眼底に現れている所見によつては直接説明することの困難な視力障碍と,なかんずく中心暗點とを證明し得ることが重要な特長をなす。
さて,わが國における球後視束炎にしてその原因が,多くは脚氣ないしVit.B缺乏にありと考えられ,いわゆる脚氣弱視あるいは軸性視束炎の名でよばれて來たものを見るに,その視障ないし中心暗點が綱膜の乳頭黄斑部の病變によつて説明されている傾向が強い。例えば脚氣弱視を唱導せる石津以來,多くの人々の特に強調している處を見ても,本症にあつては乳頭黄斑部に極めて表在性の浮腫性病變があり,その,中心性維膜炎(増田〉と異る處は,前者にあつては病變が乳頭より連續していることおよび網膜内層の神經線維層に局在するに反し,後者にあつては乳頭と無關係に黄斑部に深在せる網膜變化を主要病變とする點にあるとし,從つて脚氣弱視における中心暗點献増田型の中心暗點と異るゆえんもまたここにあると考えられている。
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