臨床實驗
球後視神經炎の再發,特に多發性硬化症との關係に就て
桑島 治三郞
1
1東北大長町分院
pp.47-50
発行日 1951年1月15日
Published Date 1951/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200765
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球後視神経炎と言う呼称は極めて漠然として混乱を招き易いが,私が茲に言う本症の概念は,著明な病的所見が眼底に見られないと言う語義的な見解には重きを置かずに,寧ろ次の如き條件,即ち臨床的には急発する視力障碍にして頭痛又は眼窩痛を伴い,特にその視力,視野及び独特な中心暗点が檢眼鏡的所見に依つては必ずしも説明され得ないと言う共通の特長があり,從つて病竈が球後の視神経に在ると考えられるもので,その主病竈の時期に依り,或いはその位置の乳頭からの距離に依つては眼底に種々の病的所見,例えば乳頭の浮腫,充血,時には萎縮像をすら認める場合があつても差支えないものの一群である.
斯る球後視神経炎の病因は必ずしも單一ではないが,曾て私は本誌第3卷に症例を挙げて論じ,此の種の視神経炎が時に脚氣乃至ヴイタミン欠乏,或いは副鼻腔疾患を原因とするとされているが,長い経過を観ていると其の多くが視神経脊髓炎に一致するものであることを明かにし,特にその再発傾向に就て注意を喚起した.同樣な再発性球後視神経炎に就てAdamantiadisは之を散在性脳脊髓炎なりとしているが,今日,臨床的並びに組織的に視神経脊髓炎及び散在性脳脊髓炎と多発性硬化症との異同は色々論議されている処で,從つて從來我が國に於ける球後視神経炎の病因が欧米のそれと異つて多発性硬化症を除外し得ると言う見解に対して重大な疑義が生じて來るのである.
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