特集 眼科臨床の進歩Ⅰ
螢光顯微鏡の臨床的應用に就て
北川 淏
1
1日本醫科大學泌尿器科
pp.827-831
発行日 1952年11月15日
Published Date 1952/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201310
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結核症の診斷並に治療には結核菌の證明が最も重要である事は今更申す迄もない。特にストレプトマイシン,パス,チビオン,ハイドラジツト等有力な結核治療劑が發見せられて以來その感が一層深い。肺結核の治療特に化學療法實施上の指針としては主としてレントゲン寫眞が利用されて居るが,最近それのみでは不充分であり,結核菌の検査が絶對的條件である事が經驗されて來た。結榎菌の検出法は現在チール・ネルゼン法が廣く用いられて居るが,その検出率は極めて低率である。培養法並に動物實験法は遙かに高率である事は周知の事實なるも,特殊な技術と多額の費用を要し,小クリニックでは實施至難である缺點はさておき,その判定迄に少くとも2週間以上を要する一事は最も大きな弱點である。診斷決定に急を要する場合,例えば結核性腦膜炎の確實な診斷を決定する場合など,その決定によつて治療方針も一變し豫後に重大な影響を及ぼす事は臨床家の等しく經驗する處である。
斯樣な場合もし培養法の成績に匹敵し,而も速座に結核菌の有無を決定し得る方法があれば,最近の進歩した結核化學療法上劃期的な貢献を呈する事であろう。この點で私は螢光顯微鏡を推賞し,少くとも結核症を臨床の對照とする臨床家の廣く採用されん事を希望する。
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