臨床實驗
後天近視に關して大塚氏との論爭の補足
佐藤 邇
pp.673
発行日 1951年10月15日
Published Date 1951/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200967
- 有料閲覧
- 文献概要
後天的近視の原因に關して大塚氏と私は大きな違いがある。即ち,大塚氏は從來の眼軸説と同じく後天的に環境の影響を受け詳細不明の何等かの機構で眼軸が著しく延長するのが後天近視の主原因であるとする。私は之に對し,確に眼軸は屈折の素因と云う點では甚だ重要ではあるか,環境影響で延長すると云う點は百年近くも證明しようとしたが未だ證明出來ず,且つ實驗的に可能性少なく,從つて後天的近視の原因としては,重要でないとする。そして私は正視や學校近視が後天的に多發するのは,持續的調節(近業)に關係した水晶體の適應で屈折力が變化したのに因ると實驗的に證明し主張する。從つて私は,大部分の遠視,正視,近視は眼軸の素因の影響と水晶體の適應に因る後天的影響とを受けている故,先天的であると共に後天的でも有ると考える。
斬樣に大塚氏と私との間には,後天近視の成因に關し意見の違いが有る故,昭和24年より度々論爭を行つた。初めの内は新しいDataや考えが現われたが,終りになると,同じ事を繰り返す樣になつて,余り著しい發展が無かつた様に思う。從つて多岐に亘つた此の論爭に一應結着を着け度いと思い,昭和26年度の學會に演題を出した。無益な論爭を避ける爲め豫め私の原稿を大塚氏に示し,私の論文の内容を互に檢討した。但し大塚氏の講演の内容に就ては知る事が出來なかつた。
Copyright © 1951, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.