臨床實驗
間歇性内斜視の精神分析學的考察
岩田 秀三
pp.506
発行日 1951年8月15日
Published Date 1951/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200914
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私は昭和14年眼臨及び昭和25年臨眼において,間歇性内斜視の合計3例を報告して,本病は間歇性に起る内直筋の痙攣によるか,或は解部的内斜靜止位にあるものに融合力に抑制が加ることによつて起る1種の定期性内斜視で,間歇性に起る原因は恐らくヒステリー性のものであろうと述べておいた。ここに更に間歇性に起る原因について,精神分析學的見地から少しく立ちいつて説明を加えて見たいと思う。
精神分析學において同一視及び攝取の心的機制といわれるものがあるが,次に丸井教授の著書より引用してこれを説明してみることにしよう。同一視とは野蠻人及び兒童は,彼等自己を對象とし客觀的に見て,これを彼等の色々の經驗より區別する事が出來ない。即ち彼等は自己に屬する事と他人或は環境の他の状況に屬するものを區別し抽象する事が出來ないのである。例えば兒童は遊戯に於て,彼等及び彼等の所持する人形を色々の人々と同一視し,後になつて若い男女は,彼等の好愛する教師と自己を同一視し,この先生の聲,態度,手眞似,服装迄も模倣する事は珍らしくないと言うが如き場合である。
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