Ⅳ私の研究
側方視に於ける調節及び輻輳機能に關する實驗的研究
井上 太
1
1東大醫學部眼科學教室
pp.172-173
発行日 1948年8月20日
Published Date 1948/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200267
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日常生活に於て吾々が兩眼視機能を營む際視線が正確に水平面上對稱輻輳位にあることは極めて尠く,寧ろ刻々變動する非對稱輻輳を水平面以外の注視面内に行ふことが多いにも拘らず調節及び輻輳機能に關する從來の研究の殆んど大部分は,視線が水平面上對稱輻輳位(正中面)にある場合に限られており,非對稱輻輳に於て而かも注視面を擧降させた場合に就ては,僅かにSnellen及びEysellsteyn, Koster, Schmi-edt, Biesinger, Hess, Sachs,加來等の斷片的の研究が見られる丈である。
一般に注視面の擧上又は降下に伴ひ,兩眼視線は開散又は輻輳するの傾向を有することは夙に知られてゐる所であり,その原因はHelm-holtzの云ふ如く日常生活の習慣にあるにせよ,或はHeringの云ふ如く調節機能等に對しては何等神經支配的の關係を持たない上轉及び下轉筋群の解剖的配置による純機械的な動作に過ぎないものにせよ,兩眼單一視を保持する爲には擧上注視面に於ては融合性の輻輳を,降下注視面に於ては反對に融合性の開散を行ふ必要があるといふこと,及び擧上又は降下注視面に於て側方視(非對稱輻輳)する際の眼球運動に與うる外眼筋群の作用型式は,水平注視面の場合に比して極めて複雜であるといふことを考へれば注視面に擧降は注視野の限界竝びに調節及び輻輳近點の状態に對し何等かの影響を與へることを想像させる。
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