〔Ⅴ〕私の經驗
Perirrhaphiaに就て
國友 昇
1
1日本大學眼科
pp.49-50
発行日 1947年4月20日
Published Date 1947/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200180
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Moretti(KMb.373頁1938)が始めたPerirrha-phiaに就ての經驗を述べる。氏の原法は0.2%ペルカミン液で結膜麻醉を起こさせた後,角膜縁を距る3mmの球結膜下に糸を通す方法である。糸は外皆瞼裂部の球結膜下に始まり角膜の上下を廻つて再び元の發點に戻り糸の兩端は外皆部の皮膚に絆創膏で貼りつけて置く。即,角膜縁に浩つて糸を球結膜下に放置しておく方法である。本法に依つて氏はトラコーマ性パンヌス及び潰瘍の治療に好成績を擧げたと述べてゐる。
私は本法を專ら瀰漫性角膜實質炎に用いて好結果を得てゐる。實質炎が極期を過ぎて毛樣充血が減少して來たら早速本法を行なう。私は點眼麻醉では應々患者に疼痛を與へるのでノボカイン液の結膜注射を行つた後,2-3號の糸を上鞏膜下成丈深く通す樣にしてゐる。即角膜侵入血管は此場合,結膜深層血管か又は虹彩血管から由來してゐるから糸を深く通すのである。糸を通すと球結膜充血が起り角膜侵入血管の循環が良く成る。從つて侵入血管の毛細管代謝は活溌となり患者に依つては此時期に反つて視力低下を訴へる者もある。糸を通してから8日−10日たつと結膜充血は糸のある部分に限局して來る。そうなると角膜侵入血管の循環も舊に復する。私は糸の兩端を切つてしまつておくので,充血が糸のある部分に限局して來ると一且拔糸し,約1週後,再び糸を通し以後此要領で何囘も繰返す。本法施行中はアトロビンで瞳孔を散大しておく。
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