特集 第7回臨床眼科学會
特別講演
結膜の炎性病巣に就て—第7回臨床眼科學會特別講演
國友 昇
1
1日本大學眼科
pp.97-110
発行日 1954年2月15日
Published Date 1954/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201736
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結膜は上皮細胞層と其の下にある薄い結合織から成る簡單な粘膜であり,結合織の中には神經,血管及びリンパ管を有するに過きない。然し此處に一旦炎症が起ると種々樣々な炎性病巣が形成され其の組織標本を作つてみると仲々複雑な様相を呈していて正常な結膜組織標本とは甚しい差異がある。所が此の兩者の差と云うものは元來炎症を起す可き刺戟が正常結膜に加わつた結果生じたものであり,且,正常結膜には見られなかつたに附加された變化の悉くは,該部の血管からの滲出と刺戟を受けて滲出を受入れた組織の反應による變化の和に過ぎない譯である。即,(炎性刺戟)+(正常結膜)=結膜炎性病巣=(結膜血管上りの滲出)+(結膜組織の反應による變化)と云う事になる。
一方體の他の部分に起る炎症の際を考えてみるに,各組織に於て其の構造及び機能を異にする譯であるから夫々血管分布の状態及び組織の反應にも差が認められ得る澤であるが,少くとも病因が同じである場合には同程度の炎性刺戟に對する極小血管の反應は同樣のものであろうと推論出來る譯である。從て或場合には我々が結膜で認めた變化と同樣の變化が體の他の部分に當然見られて良いと思考する次第である。我々眼科醫は人間の結膜の病巣を直接眼で見る事が出來,細隙燈で擴大して時々刻々の變化を捉える事が出來るばかりか時には其の病巣の組織標本を取つて検討する事も可能である。
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