書評
『橈骨遠位端骨折を究める――診療の実践A to Z』
稲垣 克記
1
1昭和大学整形外科主任教授
pp.1313-1313
発行日 2019年11月1日
Published Date 2019/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei70_1313
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- 文献概要
手の科学の進歩は著しい.橈骨遠位端骨折の治療も手の痛みの治療を含め従来の科学では扱いきれない部分をもっている.たとえば手には人間の顔と同じように表情と個性があり,人間の歴史と生活が刻まれている.Penfieldが示しているが,手は脳の広い範囲を占める.歴史的にも猿人類からヒトへの進化の過程で二足歩行を獲得し,これにより手が自由となった.ヒトは脳の進化と平行して手・前腕・肘が自由に使えるようになった.このように手の進化が脳,ことに大脳皮質の一次体性感覚野の進化に先行したことは明らかである.脳と手は密接な関係があるのである.手を扱う医師は高度の精神活動を表現する脳を理解すべきであり,脳を上手に使える手をつくるような感性と創造性豊かなアーティストとしての工夫も手の外科医には求められる.
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